学校併置問題に対する要望書提出について



要望書を会長から教育長へ手渡しています参加者が向かい合って説明などしています

3月19日に県庁8階、教育委員会へ学校併置問題に対する要望書を提出しました。
相手側は、教育長、教育監、参事、特別支援教育課長の4名で、こちらは、会長、伊藤副会長、山田元教員、事務局の4名で、事前に申し込みを行い、当日を迎えました。
先ず、自己紹介等を行い、会長から要望書が手渡され、会長、伊藤、山田の順で要望に対する説明と補足を行い、元教員の立場から学校の現状と在り方等について話しました。
こちらの説明に、各々、メモを取りながら真摯に聞いてくださり、今後の話し合いの場を設ける等については、考慮していただけると感じました。要望書にあるとおり、文書での回答をお願いし、時期については未定ですが早めの回答をお願いして参りました。
                       事務局 須藤直美

***要望書の内容***



静 県 視 第20 号  令和3年3月19日
静岡県教育委員会  教育長 木苗 直秀 様
公益社団法人静岡県視覚障害者協会  会長 須藤 正起 

要望書
〈趣旨〉
静岡視覚特別支援学校(以下、静岡視覚)と知的障害特別支援学校との併置(新聞報道では併設)計画について、説明の場を設けていただきありがとうございました。
その時伺った、これまでの経緯及び今後の展望等を基に、当会で検討した結果『今日まで視覚障害児・者のために専門的知見によって担保されてきた安全かつ安心な教育環境が失われてしまう恐れがある』と判断し、この県教委の決定を認めることはできないと結論しました。
尚、当会は、知的障害特支の狭隘化の早急な解消に反対するものではなく、寧ろこれまで以上に積極的な解決に向けたご尽力をお願い申し上げる次第です。
また、このような状況の中で、この併置計画を次の段階(設置学部の決定など)に進めないように、強く要望致します。


〈要望項目〉

@視覚支援教育の専門性と地域におけるセンター的機能を保証するために、現在ある3視覚特別支援学校、とりわけ「静岡視覚特別支援学校」を存続していただきたい。

A同一敷地内に他障害特支学校を設置しなければならない場合は併設とし、校長を2名配置していただきたい。

B上記が難しい場合は、併置だけでなく静岡視覚の移設も検討していただきたい。

C併置、移設に関する検討にあたっては、視覚障害当事者や当該校の保護者、対象校の知的障害児の保護者、当事者団体が推挙する有識者などの意見を尊重していただきたい。

D其々の検討段階において、進捗を公にし、適宜説明会を開催していただきたい。

E併置に関する検討委員会を静岡視覚内に設け、視覚支援教育の専門性をもつ教職員の立場から意見・要望等を提起できるようお取り計らいいただきたい。


〈回答について〉

この要望書への回答につきましては、文書にて速やかにお示しいただきたく、宜しくお願い致します。


〈要望に関する意見・理由〉


日頃は、視覚支援学校の充実と発展にご理解、ご尽力いただき、深謝御礼申し上げます。
以下では、この併置計画に対する当会の意見とともに反対する理由を示します。

●特別支援教育の教育理念
文科省は平成15年3月『今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)』の中で、特別支援教育を、障害のある児童生徒に対して、その一人ひとりの教育的ニーズを把握し、適切な教育的支援を行うものとして位置づけています。
また、サラマンカ声明(ユネスコ)においても、「教育システムは極めて多様な特性やニーズを考慮に入れて、計画・立案され、教育計画が実施されなければならず…」と謳っています。


●視覚支援教育で必要な施設環境
視覚障害児・者の教育環境に必要な施設の前提条件として、安全が確保されているということ。安心して闊歩できる空間があり、視覚以外の感覚を十分に活用し集中できる状態であること。この2点は、大切にすべき点です。静岡視覚は創立来120年余に亘り、これらに関するノウハウを積み重ねてきた歴史を持ちます。
児童生徒の年齢が低ければ低いほど、音や手触り・足裏感覚、残存視力などを活用して、繰り返される日々の教育の中で、自分の存在を空間のどこに位置付けるかを少しずつ試しながら会得して行くのです。その過程では、情報を得るために集中することや、自分の判断の正しさに自信を持ったり、間違っても取り返しが付く安心感を得たり、安全な場所という認識を積み重ねていくことが大切になります。
適度な広さ・大きさ、制御可能な静けさ、経験値を高めて行くための物の配置、他者に邪魔されない時間というように、視覚障害児・者の教育的施設環境は非常に繊細であって、尚且つ、教育的観点での様々な配慮が求められるのです。


●長年単障害の学校として培ってきた専門性を守って欲しい
本県で貫かれてきた「異なる障害種の子ども達が単障害で学ぶことのメリット」については、どのようにお考えでしょうか。知的・視覚のどちらの障害をもつ子供たちにとっても、この併置計画が、それぞれの障害児教育において理想的でないことは、これまでの県方針で成果が上がって来た事を一瞥すれば、自明の理であると言えます。
さらに、静岡視覚120年余の歴史を艦みても、視覚支援教育の専門性が低下していく懸念がある以上、どこにメリットがあるのかと言えば、経済的効果としか考えられません。
以上の事により、本県の教育理念や静岡視覚の成果に真っ向から反している事から、この併置計画に反対しているのです。


●視覚支援教育の専門性の維持
現在、県内3旧盲学校卒業生の多くが、共生社会の中で自立生活を送っているのは、専門性に裏打ちされた視覚支援教育の賜です。視覚障害は、その身体的損傷により、情報を得る事と自由に移動する事が難しい状況に置かれます。
視覚障害者の課題は、@如何に情報を得るか、その手段を獲得するか。A如何に自分の意志で行動するか、そのスキルを身に着けるかという事に尽きます。このことは、単障害の学校環境だからしっかりと保証することが出来てきたのです。
これまで静岡視覚は、数多くの専門性を持つ教員を輩出し、そのスキルやノウハウを継承・維持・発展させることで、地域社会で自立生活する視覚障害者を育て送り出して来ました。この事実は、教育が持つ社会的影響力の大きさを示している証拠と言えます。仮に、併置計画が他障害種校との「統合」に行き着くとして、現在の人事制度および校内人事のままでは、視覚支援教育の専門性を有する教員の配置に重大な影響が及ぶと考えられます。
ひいては、地域の学校に学ぶ視覚障害児への支援教育の要である「センター機能」にも、重大な影響が及ぶのは必至と言えます。
この併置計画の問題は、単に二つの学校を合わせるとか知的障害児の狭隘化を解消するという「表面的な」事象に留まらず、地域社会全体に影響する重大な問題だと認識しています。


●当事者不在で決定しないで欲しい
国連「障害者権利条約」を我が国が10年の歳月を重ねて、批准のために準備してきた要点とは、「私たちのことは私たちを抜きにして決めないで」という理念を社会のコンセンサスにすることでした。所謂、差別解消法、そして県条例は、視覚障害者を社会の一構成員として位置付け直し、社会が生み出す差別や排除の論理に対し、建設的対話と合理的配慮を以て尊重し合うというルールを示しました。
しかし、この併置計画に関する決定プロセスにおいて、その様なルールが適用されたとは私たちは考えていません。電話説明、唐突な新聞報道、私たちの求めに応じて行う説明会、この経過が物語っているとおり、積極的に当事者の意見を聞こうというものではありませんでした。さらに、報道では「併設」と表現しながら、その後の説明会では「併置」とするなど、一方的な決定を強く感じます。
差別解消法の実践的場あるいは指導的立場である教育委員会が、上記の対応をしたことに対し、私たちは非常に残念な思いでおります。視覚支援教育は、今や一学校現場の問題に止まらず、地域社会全体の問題です。そして、私たち視覚障害者は社会の一員として、次の社会を担う子供たちの教育に携わることは、当然の事と考えます。

以上

「学校併置問題に対する教育委員会への要望書」


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